宇部興産中央病院からの確認事項

ただ、今回の場合、バブル経済が崩壊してからも人手不足が長く続いたために、不況感はあっても不況の実感はあまりわかなかった。
有効求人倍率が1.0を割り込むのは92年の夏以降で、失業もほとんど出ていなかった。 しかし、現在は企業内失業や一時帰休、あるいは人員削減がかなり出てきた。
いまや企業内失業者は100万人をこえるとみられている。 それに対して、政府は14兆円近い景気刺激の予算を組んだが、その効果は期待されるほど大きなものではなかった。

そもそも経済のパラダイムが80年代を通じて大きく変わり、量で勝負する時代は終わったことを忘れてはいけない。 オイルショック以降、75年から86年までは有効求人倍率はつねに1.0を切っていた。
だから失業の話をすれば、80年前後の方がずっと厳しい。 ある面では、80年代前半の状況に戻るかもしれない。
しかし、基本的には全く違ってくるだろう。 今回の不況はオイルショックや円高のときより厳しく、戦後最悪の不況になるといわれている。
オイルショックも円高も原因が外にあった。 それだけ危機に対して、結束力は高まり、一致団結して対応することができた。
ところが、今回の不況の原因は、むしろ国内にある。 それがいちばんの違いではないだろうか。

今はパラダイムの変化の時代であり、これまでの経済指標をもとにして、将来は読めない。 景気循環論などは関係なく、新しい時代に突入したと考えなければだめだ。
これまでと大きな断層ができており、連続していない。 証券業界にとっても、今の不況の方が40年不況よりずっと厳しい。
40年不況のときには、株は財産であり、成長するものだという神話がまだ健在だった。 いまはもう、ボロ株でも何でも近い将来右肩上がりしていくというのどかな夢を抱ける時代ではない。
そのころの証券屋には大した社会的ステイタスもなく、2、三流の業界というイメージだったが、いまは東大卒が入りたがるほど、一流の業界になってきたために余計にきつい。 余談だが、一流大学の卒業生がこぞって入りはじめる業界・企業は、もうその繁栄の絶頂期を過ぎたところが多い。
石炭、繊維、鉄鋼、新聞社、広告代理店、そして証券業、みなそうである。 今回の証券不況の難しいところは、意外に気がつかないことだが、株の供給数が多すぎることだ。
株の場合、供給数が多いからといって簡単に値段が落ちるわけではない。 取引が少なくなったために、動かなくなったのだ。
難しい時代ではあるが、考えてみればこれが正常である。 あるいは正常化へ向かう途上の苦しみといってもいい。
短期的な損得利害に関していえば、現下の不況は耐えがたいことだが、少し視点を変えれば、日本経済のより健全な発展、ひいてはサラリーマンの豊かさの実現のためにも、またよしとしなければならない。 サラリーマンの「生き方」が問われる逆風にさらされるサラリーマンいま、時代の転換期だといわれる。

経営パラダイムが大きく変わろうとしている。 このような転換期には、これまで業績のよかった会社が斜陽になってしまったり、無名の小さな会社が急激に伸ぴたりする。
企業は所詮、時代適応業である。 時代にうまく適応できた企業は大きく伸び、適応できない企業は急速に斜陽化していく。
サラリーマンも同じだ。 これまで、出世街道をまっしぐらに走っていたエリート社員がたちまち窓際にされたり、会社にとって異端だと見られていた社員が必要とされるようになったりする。
激震の時代とはそういうものである。 とくに、不況期にはこの差が際だってくる。
船が静かな海の上を滑るように走っているときは、誰もが船上の生活をエンジョイできる。 働きが多少悪い船員がいても、好調なときはさしたる問題にはならない。
しかし、そこに嵐がくれば、どうなるのか。 まして、沈没しそうになったら、余計な荷物はすべて海に投げ捨てなければならない。
そのとき必要とされる人材は、実際に船のエンジンを動かせる技術者であり、天候を観る気象担当者であって、何もできない高級船員ではない。 もちろん、船長の強力なリーダーシップも必要になる。
高度成長期、あるいは80年代の終わりから90年頃までの好景気のときには、マストに帆さえ張っていれば順調に航海できた。 しかし、大きな嵐がやってきてしまったいま、のんびり構えてはいられない。
かつてのよき日々を思い、この嵐がおさまる日を、ただ漫然と待ち望んでいる人には、永遠にその日は訪れないかもしれない。 いままさにサラリーマン下剋上の時代に突入しているからである。
この逆境をどう活かせるかが、いまサラリーマンに問われている。 会社に必要な人間とそうでない人間、会社に負担になってしまう人間の選別がひそかにはじまっている。
肩叩きもレイオフもあり得ることは、パイオニア、IBMの例が証明している。 無用な社員は切り捨てられるバブル時代ならば景気の波にのって、年功序列や終身雇用、あるいは月給は上がるものだという神話が生き残っていた。

いま、それが完全に崩れはじめた。 株、土地神話の崩壊の次にやってくるのは、給料神話の崩壊だろう。
これからは月給も地位も年々上がるとは、かならずしも保証されない。 無用な社員への恩情はもはや期待できなくなった。
これまで何度も日本的経営は転換期を迎えたといわれてきた。 しかし、生身の企業はそう簡単には変われない。
不合理だと思っていても、システムはなかなか変わらないものである。 総論賛成、各論反対では物事が進まないことが、世の中にはあまりに多い。
この旧態依然とした日本的な経営スタイルが、バブル経済から複合不況への突入、外圧といった様々な要因が重なり合うことで、大きく転換し始めた。 時代は変わりつつある。
変化へのエネルギーが長期にわたって蓄積されただけに、この力は大きい。 もう後戻りはできまい。
現在の現象を単に「不況」というだけの理由で説明するのは大きな間違いである。 バブル経済、数々の政治的・経済的な不祥事、高まる外圧、長引く複合不況、全業界に広がる減収減益のオンパレード、先が見えない不安感の蓄積。
これらすべてが重なり、変革への膨大なエネルギーとなった。 これまでの朧を吐き出す大手術が始まっている。

いったん始まったこの流れは、少々景気が回復しても元には戻らないだろう。 経営者もサラリーマンも、これまでの常識で判断していると未来はない。
今日だけは何とかしのげるかもしれないが、明日には生き残れまい。 とくに、このような大変革の時期には、ベテランや成功してきた者ほど危ない。
これまでのプラスがマイナスになる。 長年の経験、いままでの常識、成功体験にとらわれすぎて、変化を見誤ることになってしまう。
自らのベテラン度をうたがう勇気が必要である。 これをアンラーニングという。
会社にはもう窓際族を抱える余裕は残されていない。 この嵐が過ぎ去るまでじっと我慢していれば何とかなるだろうという待ちの姿勢だけではうまくいかない。

意識改革が求められている。 真の実力、真のクリエイティヴィティーが、いま問われている。
この厳しきサラリーマン下剋上の時代をどう生き抜き、どう勝ち残っていくのか。 ビジネスマンとしてのトータルな力量が問われている。
サラリーマン自立の時代その力とは、かつての会社人間のように会社に媚びへつらうことではない。

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